はじめに

現在、人材不足が深刻化しており、当社の戦力である技能職の採用も非常に難しい状況です。特に、溶接や機械加工といった技能の習得には時間を要し、ベテラン社員の退職が進むにつれて、年々厳しさが増しています。

こうした課題に対応するため、当社はDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組み、少ない人員でもより多くの仕事をこなせるよう、全社的な生産能力の向上を目指します。そのためには、これまで人手に頼っていた作業を、PCや機械に代行させる方策を検討し、実行していくことが不可欠です。

まずは、単純作業の自動化から着手し、順次、より複雑な作業の自動化も進めていきます。一般的に、大量生産品の製造は自動化の適用が容易ですが、当社では多品種少量の製造においても積極的に自動化を推進します。そのために、センサー技術やAIの活用は欠かせないと考えています。

また、設計・製造・事務といったすべての工程において、社員同士のコミュニケーションを円滑にし、業務の効率化を図ります。さらに、自動化が可能な業務については積極的に導入し、業務の負担を軽減します。

これらの取り組みにより、業績の向上を実現するとともに、社員の労働時間を削減し、働きやすい環境を整えていきます。当社のDX戦略の狙いは、まさにここにあります。この意思を表明するため、下記のように「DX中期経営計画」を立案しました。すでに着手済みのDX計画を含め、3年以内に顧客視点でより大きな価値を生むべく邁進してまいります。

 

代表取締役 武田信秀

大建産業 DX中期経営計画(2024年~2026年)

▽1.経営理念

▽2.ビジョン

▽3.ビジョン実現のためのビジネスモデルの方向性

▽4.ビジョン達成のための4つの戦略

▽5.D X戦略とデータ活用

▽6.D X推進体制

▽7.デジタル人材の育成

▽8.I Tシステム環境の整備

▽9.D X戦略の達成度を測定するKPI

▽10.情報発信

1.経営理念

社員一人一人が、仕事を通じて成長できる会社であり続ける。

2.ビジョン

【経営ビジョン】

将来に向かって製造業を発展的に持続させていくため、DXの活用を軸に社会に必要とされるプロセスを生み出し、収益を上げ続ける会社になる

【人材ビジョン】

技術・技能と人間性を自発的に磨く社員が、客先からの要望に応えて、仕事を遂行する会社になっている

3.ビジョン実現のためのビジネスモデルの方向性

顧客からのQCD向上要請にこたえ、より少ない人員で品質を維持していくために、製造現場の自動化を可能な限り進めます。ただ単に自動化システムを導入するだけでなく、付加価値の高い技術の提供により顧客満足を追求します。サプライチェーンにおいては特に材料メーカーと設計データを共有し、材料製造の効率化と精度の向上を図ります。社内の情報共有をスムーズにするために、全社員にタブレットを配付し、グループウエアで製造の進捗共有を図るなどの策を実施します。以上のように、顧客に提供する価値を現状より格段に向上させるため、DXを軸にあらゆる角度から検討を進めます。

4.ビジョン達成のための4つの戦略

上記ビジョンを達成するために次の4つの戦略を展開します。

①溶接完全自動化戦略

②サプライチェーンデータ共有化戦略

③部品図面データ活用戦略

④生産効率化戦略

5.D X戦略とデータ活用

【D X戦略】

①溶接完全自動化戦略

ロボットとレーザーを活用した溶接工程のシステム化により、多品種少量リピート品の完全自動生産を目指します。これにより、顧客満足の向上と社員のワークライフバランスの両立を目指します。

②サプライチェーンデータ共有化戦略

材料メーカーとCADソフトを統一し、オンラインストレージでデータを共有します。FAXなどのアナログによる情報伝達方法を減らし、入力の二度手間や転記ミスなどに起因する非効率を排除します。

③部品図面データ活用戦略

部品図面の寸法データを活用して材料重量の自動算出システムを開発し、見積りのスピードアップによる顧客満足の向上を図ります。

④生産効率化戦略

グループウエアを導入し、生産計画・進捗報告、社内情報共有を実現。今後は、生産効率アップに貢献する新しい利用方法等を検討します。

【データ活用の取り組み方】

A)画像データと自動化ロボットの活用(①溶接完全自動化戦略):まずは、画像データを活用して溶接仮付け時の部材配置を確認し、ずれ量を補正する仕組みを開発します。次に、その仕組みをロボットに融合することで溶接工程を完全自動化します。昼はロボットと人の協働作業、夜は安い電力を使いロボットでのフル稼働をめざし、社員の労働時間を減らしながら、業績アップを狙います。

B)部品図面データの作成と活用(②サプライチェーンデータ共有化、③部品図面データ活用戦略):客先からの部品データをCADにより溶接用の図面データに展開し、材料メーカーと共有します。同じ図面データを活用して材料重量を自動計算するプログラムを開発し、見積に反映するシステムを開発します。さらに見積重量と製品重量の差を標準化し、概算見積のスピードアップを図り、顧客満足を向上させます。

C)生産計画と実績データの対比による生産効率向上策の検討(④生産効率化戦略):計画データと実績データを対比することにより、標準作業時間を設定します。また個々の社員間の技能の差を把握し、人材教育に活用します。

6.D X推進体制

社長を推進リーダーとしD X推進体制を構築しました。下記のように編成しています。

  • 総務D X担当:②サプライチェーンデータ共有化・③部品図面データ活用・④生産効率化プロジェクト担当
  • 製造D X担当:①溶接完全自動化プロジェクト担当
  • D X実装担当(外注):①溶接自動化プロジェクトのシステム開発担当
  • 人材育成担当:デジタルを活用した人材育成の効率化を担当

7.デジタル人材の育成

・溶接シミュレーターとロボドリルおよび動画マニュアルを用いて溶接技能職と機械加工技能職の育成を早期化します。今後は、O J Tを中心に品質管理意識の変革に取り組みます。

・各担当は就業時間中に、自ら必要な知識を吸収し、実務に役立てることとしています。そのために必要な資料購入、研修等の経費は会社が負担します。

・社長自ら、A I やIoTなどの知識を吸収し、社内に展開します。

8.I Tシステム環境の整備

①溶接完全自動化戦略:センサーとロボットを融合したシステムを開発中(2025年度中に完成し、2026年度よりテスト稼働、2027年度より本格稼働)

②サプライチェーンデータ共有化戦略:導入済みの3D C A Dを活用して溶接用の図面データを作成し、材料メーカーとのストレージでの共有を開始(ストレージは2025年度中に整備し、活用開始)

③部品図面データ活用戦略:2025年度より、部品図面データから材料重量を自動算出するシステムを開発し、2026年度より試験運用開始

④生産効率化戦略:全社員へのタブレット支給は完了し、Line Worksを導入、運用開始済み

9.D X戦略の達成度を測定するKPI

① 溶接完全自動化戦略の達成指標
 ・2年以内に全溶接案件の20%を自動化工程に移行
② サプライチェーンデータ共有化戦略の達成指標
 ・材料メーカーへのFAX送信率を50%に削減
③ 部品図面データ活用戦略の達成指標:
 ・2年以内に寸法データを活用した材料重量の自動算出システムを構築し、全見積もりに活用する
④ 生産効率化戦略の達成指標
 ・リピート品の50%について標準作業時間を設定する

10.情報発信

弊社ホームページにて情報発信